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「さかなのこ」(2022)“魚が好き”で人気者になったさかなクン、 “のん”の一挙一動がこれ以上のメッセージだった。

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「横道世之介」(2012)でタッグを組んだ沖田修一監督と脚本家の前田司郎さん。これに「あまちゃん」の“のん”さん主演作品。見逃して悔しい作品!やっとWOWOW初放送で観ることができました。

原作:さかなクンの自叙伝「さかなクンの一魚一会 まいにち夢中な人生!」監督:沖田修一、脚本:沖田修一 前田司郎、撮影:佐々木靖之、編集:山崎梓、音楽:パスカルズ、主題歌:CHAI。

出演者:のん、柳楽優弥、夏帆、磯村勇斗、岡山天音、三宅弘城、井川遥、さかなクン、他。

物語は、
魚類に関する豊富な知識でタレントや学者としても活躍するさかなクンの半生。

小学生のミー坊は魚が大好きで、寝ても覚めても魚のことばかり考えている。父親は周囲の子どもとは少し違うことを心配するが、母親はそんなミー坊を温かく見守り、背中を押し続けた。高校生になっても魚に夢中なミー坊は、町の不良たちとも何故か仲が良い。やがてひとり暮らしを始めたミー坊は、多くの出会いや再会を経験しながら、ミー坊だけが進むことのできる道へ飛び込んでいく。(映画COMより)

大活躍のさかなクンはどのようにして生まれたか。その秘密がユーモアたっぷりに明かされる作品。のんさんはのんさんでなく、さまに“さかなクン”と確信できる作品でした。


あらすじ<&感想:
「男か女かは、どっちでもいい」で始まる物語、

お母さん(井川遥)と一緒に水族館でタコに魅入り終日ここで過ごし、毎日お母さんにタコ料理を作ってもらって大満足のミー坊(のん)。 (笑)

こんなミー坊が海水浴でタコを掴んで、いやタコに掴まれて陸に上がってきた。(笑)お父さん(三宅弘城)が「タコはこうやって食べると美味しい」と何度もタコをコンクリートに叩きつけてバーベキューにして食べさせた。(笑)もうタコから離れられなくなった。(笑) お母さんから贈られた“魚貝類図鑑“を見ながら教室でもタコの絵を描き続けた。
2タコ

お父さんは「“おかしな子“だから注意しろ!」とお母さんに言うがお母さんは「あの子のままでいい」とミー坊を応援し続けた。

こんなミー坊を応援してくれるのがクラスメートのモモコ。「魚博士になるのか?」とひやかすのがヒヨだった。ミー坊は「モモコと結婚するのか」と言われるほどに男っぽい女の子だった。だから男子に何を言われても平気だった!

ミー坊の自慢は「魚の細部までよく描かれている」と魚の絵を掲示板に張り出されたこと。

こんなミー坊の運命に関わる出来事があった。ギョギョおじさん(さかなクン)という魚好きの変わったおじさんとの出会い。おじさんのところで夜遅くまで魚の話を聞いていて、「ミー坊が誘拐された」と大騒ぎになった。「おじさんはそんな人ではない」と言ったが、お巡りさんが連行していってしまった。そのときおじさんが大切にしていた魔力のある“お魚の帽子”をプレゼントしてくれた。ミー坊はこれを宝物にしていた。

高校生になったミー坊。ギョギョおじさんに教わった通りに魚を釣って水槽で飼い、絵にすること。学校には学ランで出席。長い髪にこの制服はよく合う。(笑)「ミー坊新聞」で魚の紹介と不良学生の批判記事で人気の新聞だった。(笑)
3高校生

記事に反抗してくる総長(磯村勇斗)や子分の籾山(岡山天音)には釣った魚を絞めてさしみにして食べさせ、その美味さで虜にする。(笑)のちに籾山はイカの刺身の味が忘れられず料理人になるのだか。

そんなミー坊にカブトガニ飼育の要請がきた。不良学生を仕切って餌を採取中、もうひとつの不良学生グループと対決。狂犬のヒロと再会した。(笑)ヒロが「お前はバカだから勉強しろ!」と去って行った。ミー坊は「私も東京の大学へ行く!」と言い返した。しかし、勉強はぜず、魚の世話で過ごした。(笑)

しかし、カブトガニの人工孵化に成功!これで表彰された。ミー坊は魚博士になりたいと思った。

お母さんが焼き魚で祝ってくれた。ミー坊は「魚は頭から食べれば骨は喉に引っかからない」と教えた。これにはびっくりでしたね。

三者面談。担任の先生がお母さんに「勉強させてください」と言うが、お母さんは「みんな同じでは社会がおかしくなる。この子は魚が好きで、魚の絵を書いて、それで良いんです!」と答えた。(笑)

高校を卒業。お母さんの「広い社会に出なさい!」に従って就職した。

最初は水族館に就職。次は寿司屋さん。寿司屋の従業員とキャバクラに行きホステスのモモコに出会った。

モモコの紹介で歯医者(豊原功補)から水槽の注文を受け、コンセプト「餌づけして楽しむ」と水槽製作に熱中した。稚魚は自分が海で採取し部品はペットショップ「海人」から仕入れた。しかし、歯医者は「魚が見えない、キンキラキンの水槽だ」と言い、意に添わなかった。しかし、これが縁で「海人」で働くことになった。

ミー坊のところにモモコが子ずれで駆け込んできた。この子を喜ばせようとクレヨンを買うが、「迷惑かける」とモモコ親子が姿を消してしまった。ミー坊はこのクレヨンで魚の絵を描き始めた。
4モモコ

寂しさを紛らわせるため食堂でシシャモを注文してお酒を呑むが、注文したシシャモが出てこない。やけくそで店のシャッターにシシャモの絵を描いた。(笑)行き交う街の人が見る。そこに「お前が書いたか?」と総長が居た。

総長に連れられて寿司屋に入った。店主は籾山だった。「高校のときあんたのイカのさしみに感動して寿司屋になった」という。
籾山が「この店にあの絵を描いてくれ!」と注文した。ミー坊は店の内にも外にも絵を描いた。お母さんを呼んで見てもらった。お母さんは「本当のこと話すと家はみんな魚は嫌いだった、皆に無理させた」と言い「タコ!」と注文した。(笑)
5総長

TV局のディレクターをやっている総長がら番組に呼ばれた!ミー坊はギョギョおじさんの帽子を被って出演、これまでの経験したことを喋った!

ミー坊はギョギョおじさんのように子供たちの人気者となった。

まとめ:
ラストシーン。TVのスタジオでさかなクンが「魚が大好きだからここにいます」と人気者になった秘密を明かしますが、“のん”さんの一挙一動がこれ以上のメッセージでした。なんとも言えない“味のあるキャラクター”で、さかなクン以上でした。(笑)

「こんな世界があるの、あったらいいなと何時までも観ていたい」と邦画の面白さを堪能しました。

冒頭の「男か女かは、どっちでもいい!」というメッセージ。これが生きている脚本と演出。これが突出した作品でした。

おそらく脚本はのんさんに合わせるよう原作を修正しているでしょう。それほどにのんさんが生かされた作品になっていました。

子供のころは女性か男性はわからない、高校生時代は学ランで不良どもに屈することなく釣りを続ける。この男性か女性かわからないキャラクターがしっかり生かされ、後半の出来すぎたエピソードも「すべて経験したことは生かされる」という説得力のある物語になっていました。

「子供の育て方、教育とは何か」がテーマ。勉強なんかより人をどう育てるか。さかなクンだけの努力ではなかった。お母さんの応援、友人たちの応援。なによりもぎょぎょおじさんの影響が大きかった。大人の責任が問われます!

冒頭の水槽で泳ぐフグを観て、フグの顔は人間そっくりで表情があると思った。魚の飼育は犬猫に優る楽しみかもしれませんね!(笑)
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「The Witch 魔女 増殖」(2022)世界感の謎の面白さ!超能力アクションは今一つだった!

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韓国映画、「哀しみが少女を完全体へと変貌させる予測不能のストーリー展開、衝撃のバトル・アクション!」というコピーを見て、観ることにしました!(笑)

人体実験で殺人兵器と化した少女の戦いを描き話題を呼んだ韓国映画「The Witch 魔女」のシリーズ第2作です。第1作を見ないでの鑑賞となりました。はたして理解できたか?

第3作の案内が作中で発表されています。

監督・脚本:パク・フンジョン、韓国映画ジャンルの最先端をいく監督とのこと。撮影:キム・ヨンホ、編集:チャン・レヴォン、音楽:モグ、CG:チャン・ミンジェ。

出演者:シン・シア、パク・ウンビン、ソ・ウンス、ソン・ユビン、チン・グ、チョ・ミンス、イ・ジョンソク、キム・ダミ、他。

オーディションで1400人以上の中から抜てきされた主演のシン・シアが人知を超えたパワー持つ可憐ではかなげな少女を演じるというのがみ見所だという。

物語は、
秘密研究所アークが何者かに襲撃され、1人の少女が生き残る。彼女は遺伝子操作で最凶のアサシンを養成する「魔女プロジェクト」の実験体だった。初めて研究所の外に出た彼女は、心優しい牧場主の女性とその弟のもとに身を寄せ、人間らしい感情に目覚めていく。しかし魔女プロジェクトの創始者ペク総括は少女を危険視し、抹殺のため工作員を送り込む。さらにアークを壊滅させた超能力者集団や地元の犯罪組織も入り乱れ、激しい戦いが始まる。(映画COMより)

魔女プロゼクトの全体構想を逐次明かしながら、新たに出現した少女(アーク1)が敵と戦いながら遺伝子技術で改良された完成品としてのパワーを見せるSFアクションストーリー。
第1作との関りが随所にあるので、これを観ておかないと理解できず、面白味を感じないかもしれない。そして少女の持つパワーをどう評価するか?


あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
冒頭、牛の鳴き声、牧場、全身血だらけの女も子の映像。そしてバス旅行の車中で騒ぐ社員たち、その中の女性がお腹を押さえる。バスは進路を変えて深い森を通り抜け、某所で社内にガスを撒かれ、女性が施設に収容される。ペク博士という女性から「お腹の子は双子よ、安心して!貴方の味方」と話しかけられる。女性は秘密(遺伝子)研究所で出産した。

この前振りから、冒頭の血だらけの女の子は前作の主人公ジャユン(キム・ダミ)バスから誘拐された女性はジャユンの母親。双子を出産しているのでもうひとりの子が本作の主人公“アーク1”と呼ばれる少女ということになる。

アークの責任者チャン(イ・ジョンソク)は「魔女プロジェクト」のペク総括(チョ・ミンス)の館に報告にやってきた。「アークのメインが逃げた!この秘密を知っているからには内部に犯人がいる。上海土偶との関係は?あの娘が消えた!」と報告した。ペク総括は「捕まえてみなければわからない!」と不快感を示した。チャンが顔に太い血管が浮かべた。

「魔女プロジェクト」の内部がふたつに割れているが、その目的がよく分からない!

次に少女がアークを脱出するシーンが描かれる。これが分かり難い!アーク施設が “土偶”の入れ墨のある一団に襲撃され、少女が記憶を失い、目覚めて破壊された施設から脱出し、雪に道路を歩いていつところを、通りかかった車に拾われた。車には牧場主のギョンヒ(パク・ウンビン)とヤクザの組長ヨンドウ(チン・グ)の子分たち。

少女は瞬時に車の所有者証を読み取るほどの能力の持ち主だった。子分たちが少女を「何者か?」と揶揄する。たまりかねた少女が1発喰らわせたことで社内は大混乱、車が横転。

少女はギョンヒの機転で闇医者の治療を受けた。医者は「皮膚に異常があるから警察に渡せ」と言うが、ギョンヒは「この娘には力がある」と引き取った。少女はアークが襲撃されたとき、軽機で地面を撃って逃がしてくれた女性のことを思い出していた。

中東アジアの某所。
組織本部の工作員チョ(ソ・ウンス)が刺殺任務を終え配下のアメリカ人トムの車で現場を去る。トムに「土偶の入れ墨があった」と話す。チョは英語が堪能だ。このふたりがユーモアを交えた会話で笑わせてくれますが、笑えるかどうか?
チュが洗面所で浴びた血液を洗い落とすが、腕に太い血管が浮かぶ。チャンと同じだ!ふたりの関係は?

パク総括はチュを呼び戻した。パク総括が「この計画は40年前から始めているが、今回は胚から作ったクーロンのひとつだ。どんなになるか分からん。これを排斥したい」と言う。チョは「上海者は薬物依存でダメだが、これは上層部に漏れたら終わりだ」と返した。

上層部とは、その目的は何かが分からない?

パク総括は「殺害せよ」と命じるが、頭に埋め込んだデバイスは故障しているという。

チョはアークの所在する島にやってきて、研究で亡くなった者たちの墓場でチャンに会った。チャンが「パク総括には関わるな!」と警告したが、チョはこれを無視した。

少女はギョンヒの弟デギル(ソン・ユビン)にも気にいられ、人間らしく日々育っていった。少女はこれがエネルギー源だと言わんばかりによく食べる。(笑)そしてしばしは鼻血が出て、頭痛が起き、「我が子、お母さんよ」の声が聞こえる
2ギョンヒ

ヤクザのヨンドウが「配下を失った!償いの代わりに土地譲渡証明書にサインせよ!」とギョンヒを尋ねて牧場にやってきた。
ギョンヒはこれを銃を構えて拒否すると銃で脅し殴りかかる。姉を援護するデギルも殴り倒された。これを屋根の上から見ていた少女は飛び降りて、ヨンドウの4~5人の部下を殴り倒し、車をぶっ飛ばした。一瞬のうちに彼女の持つ力を見せつけた
3上海

このころ上海の土偶が「少女を殺す」と韓国に到着した。「前に来た時に首を落としておけばよかった」という。

ヨンドウは闇医者を脅して少女の情報を探る。そこに上海土偶が現れ、連携を結ぶ。闇医者はギョンヒに「安全のため土地と少女から手を引け」と忠告。
ギョンヒにチョが接近し、弟デギルの安全を保障するから少女を差し出せと要求してきた。
4ラストシーン

ここから少女の命を賭けて、釜山の花火大会開始を合図に、チョとトム、ヨンドウ、上海土偶と少女(ギョンヒとデギルを含む)の三つ巴の超絶バトルロワイヤル・アクションが開始される。

ラストでジャユンが登場し、少女を追っていた目的を明らかにする。

まとめ:
チョとトム、ヨンドウ、上海土偶と少女の三つ巴の超絶バトルロワイヤル・アクション。格闘技、銃撃戦、爆発、見どころは少女が繰り出すワイヤーアクションと万物の地上浮遊を利用した攻撃だ。激しい応酬が繰り広げられ、スピード感のあるアクションだが、「アメリカのユニバース作品に挑んだ作品だ!」とその意気を認めますが、既視感がある。

シン・シアのはかなげな少女が強烈な戦闘力発揮する演技はちょっと痛々しく感じた。少女が戦う目的に、もうすこし感情が入る情景が欲しかった。ソ・ウンスの柔らかい身体を使ったアクション、演技が好みでした。
5ラストシーン

物語の世界感が分かり難い!まだ明かされてないのかな!この世界感で突出した少女の戦闘パワーが描かれても、世界感に奇抜な戦闘パワーが一致しないと感じました。次の作品に期待したいところです。

済州島のロケ、美しい映像を見ることが出来、満足しています!
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「戦争と女の顔」(2019)戦争を全く語らない戦争映画だからこそ伝わる、戦争の悲惨さ!

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原案がノーベル文学賞作家のスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチが独ソ戦に参戦した女性たちに話を聞いてまとめた証言集「戦争は女の顔をしていない」。未読です。

ロシア作品には興味がある!さらにノーベル賞受賞作ということで、WOWOWで鑑賞しました。ロシア政府は本作の上映を禁止しているとのこと。となると余計に興味が湧いてきます。

監督:カンテミール・バラーゴフ、脚本:カンテミール・バラーゴフ アレクサンドル・チェレホフ、撮影:クセニア・セレダ、音楽:エフゲニー・ガルペリン。

出演者:ビクトリア・ミロシニチェンコ、バシリサ・ペレリギナ、アンドレイ・バイコフ、クセニヤ・クテポワ、イーゴリ・シローコフ、コンスタンチン・バラキレフ、ティモフェイ・グラスコフ、他。

物語は
第2次世界大戦に女性兵士として従軍したイーヤは、終戦直後の1945年、荒廃したレニングラード (現サンクトペテルブルク)の街の軍病院で、PTSDを抱えながら看護師として働いていた。しかし、ある日、PTSDによる発作のせいで面倒をみていた子どもを死なせてしまう。そこに子どもの母親で戦友でもあるマーシャが戦地から帰還。彼女もまた、イーヤと同じように心に大きな傷を抱えていた。心身ともにボロボロになった2人の元女性兵士は、なんとか自分たちの生活を再建しようとし、そのための道のりの先に希望を見いだすが……。

カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で国際映画批評家連盟賞と監督賞をダブル受賞作品。

ベオグラードの厳冬の中で語られる物語。女性兵士と言いながら実態は何であったか?このことが語られず、彼女たちが蒙った説きようがない精神的トラウマを色彩や音をモチーフにして描き、戦争の見えざる残酷さを見せつけ、改めて女性の性の問題を問う作品だった。


あらすじ&感想:
レニングラードの軍病院。かって女性兵士であったイーヤ(ビクトリア・ミロシニチェンコはこの病因で看護師をしながら戦友マーシャ(バシリサ・ペレリギナ)から託された3歳のパーシュカ(ティモフェイ・グラスコフ)と暮らしていた。イーヤは長身で「のっぽ」と呼ばれていた。

冒頭、病院の洗濯場でイーヤがトラウマで苦しむシーンから物語が始まる。“コクコク”と喉を鳴らして苦しむイーヤを仲間は「また始まった!」と収まるのを待つ。パーシュカは可愛く、病院に連れていくと患者たちのお気に入りになっていた。病院長のイワノヴィッチ(アンドレイ・バイコフ)はそんなイーヤに病院で余った食料を与えて応援していた。
2亡き子と

ある日の夜、イーヤが手仕事をしているときパーシュカが甘えて身体に触れるとイーヤはパーシュカを抱きしめ、トラウマでそのまま押し倒して圧死させてしまった。このトラウマの原因は何かが物語の進展に伴い明らかになってくる。

そこにベルリンでの戦を終えたマーシャが帰還。イーヤは詳しく語らないがパーシュカが亡くなったことを悟り、マーシャは血を吐いて「踊ろう!」とふたりで街に繰り出した。マーシャのトラウマは血を吐くことで示される。

イーヤは消極的で男嫌いな性格、グリーンの衣類を身につけている。一方のマーシャは情熱的で男好きな性格、衣類が赤になっている。繊細なふたりの感情のやりとりはこの色で表現される。

ダンスホールは休みだったが、そこで出会ったふたりの男に誘われ車の中で談笑。マーシャがそのうちのひとりサーシャ(イーゴリ・シローコフ)が気に入り、もうひとりの男とイーヤに「遊んできて!」と車から追い出した。イーヤは嫌々ながらマーシャの望みを受け入れた。
マーシャは車の中で童貞のサーシャとセックス。マーシャは戦場に戻っていた。イーヤは男の要求をはねのけ男の腕を圧し折って車に戻り、サーシャを殴り、マーシャをアパートに連れ戻った。

大浴場。イーヤはマーシャの腹部に大きな傷があることを発見。マーシャは「止めればよかった!でも、一人では生きていけない、子供が欲しい!」という。

マーシャは生きていくためにイーヤの居る病院を選んだ。院長のイワノヴィッチは快く受け入れた。

入院中の全身麻痺患者のステパン(コンスタンチン・バラキレフ)に通信が途絶えていた妻のターニャが会いにやってきた。ターニャは戦死報で亡くなったものと思っていたという。再起不能だと知った妻、妻の元に返っても無用ものという夫。どうすべきかをイワノヴィッチに問うた。イワノヴィッチの答えはステパンの自死だった。これをステパン夫婦が受け入れた。

イワノヴィッチはステパンの安楽死をイーヤに指示した。イーヤはこれまでと同じようにこれを受け入れた。
3安楽死を命令

戦争が終わりやっと平和が訪れたと思っても決してそうではない、こんな悲劇が繰り返されていたのだった。

政府高官が患者慰問に訪れた。その付き人がサーシャだった。この再会にマーシャは血を吐いた!戦場ではこんなことが続いていたのだった。

イーヤが安楽死を行なう部屋にマーシャが血を吐いて休んでいてその一部始終を見ていた。
マーシャは「何としても子供が欲しい」とイワノヴィッチの子供を授かることをイーヤに説得。嫌がるイーヤにこれを受け入れさせ、不法な安楽死を訴える文章にサインさせた。
4子供を産んで!

病院の新年パーティーでマーシャはこの文章をワノヴィッチに示した。イワノヴィッチは拒否すればイーヤも同罪になると受け入れた。

ベッドのイーヤ。マーシャを抱きながら、イワノヴィッチを受け入れた

サーシャが食べ物を持ってアパートを訪ねてくる。イーヤは嫌がったが、マーシャが部屋にサーシャを招き入れるようになった。

イワノヴィッチが病院を辞めて、新しい医院長が着任した。

イーヤの妊娠の兆候が表れた。隣に住む洋服仕立て人がクリーンのドレスを作って、マーシャに「モデルになって欲しい」と訪ねてきた。マーシャはグリーンのドレスを羽織り舞った。イーヤはこれを見て嬉しくなり、パーシュカを押し倒して圧死させたように、マーシャに覆い被り激しくキスを求めた!マーシャがこれを拒否した。

イーヤとマーシャの関係はこのことで壊れ、マーシャはサーシャとの結婚を決意してイーヤの元を離れることにした。イーヤは「お腹の子はあなたに上げる」と送り出した。

イーヤは「心に空洞ができた」とイワノヴィッチを訪ね「抱いて!」と頼んだが、「一緒に来るか!」と言われ、諦めた。

サーシャの実家は大豪邸に住む富豪家だった。マーシャが玄関先で母親のリュボーフィ(クセニヤ・クテポワ)に挨拶すると「おかえりなさい!」と言われた。サージャに促され邸に入り、あらためて結婚を言い出すと、リュボーフィは「戦闘員と言いながらその実態は男の遊び道具であった。サージャはあなたを遊びものにしただけですぐ捨てる」と結婚を認めなかった。マーシャは「生活のため次から次へと男を変え、兵站部隊長がもっともよかった。2年間身体で稼いだ。貴方は自分で食べられる力はない!」と啖呵を切った。これを聞いたサーシャは邸を飛び出した。「哀愁」(1940)に同じようなシーンがあり、戦争による女性の悲劇を見る思いでした。

マーシャは電車での帰り、電車が人を撥ね停車。「のっぽの女だ!」の声を聴いて確認に走った。イーヤではなかった!マーシャの胸はイーヤへの思いでいっぱいになった。

マーシャがグリーンの上着でイーヤのアパートを訪ねると、イーヤは赤いセーターを着て“コクコク”と喉を鳴らし苦しんでいた。マーシャが「血が付いた!」と話すとイーヤが「洗えば!私は役に立たない!」と答えた。するとマーシャが「何も話さないで」とイーヤの口を塞いだ。ポスターの画がよく生きている!

イーヤが「嘘でしょう!私も他に誰もいらない。赤ちゃんを産む、きっと男の子よ!」と笑った。マーシャがイーヤを抱き激しくキスを求めた。

まとめ:
イーヤとマーシャは生まれてくる子とともにレスビアンとして生きることで戦場のトラウマを克服する道を選んだ。恐らく当時この生き方はなかった。新しい生き方だった。性の多様性を説いた作品だと思った。

戦争、トラウマの原因を描かないで、ふたりの精神状態を色彩と音をメタファーとして明かしていく演出。ラストシーンで、ふたりの衣装の色彩がこれまでとは逆になっている。ふたりがトラウマの中でこの衣装で交わす会話。ここでトラウマの全てが明かされるラストシーンはすばらしい演出でした。

主役のふたり、イーヤ役のヴィクトリア・ミロシニチェンコとマーシャ役のヴァシリサ・ペレリギナは共に本作が長編デビュー作とか。新人とは思えない熱演、素晴らしかった。特に女性の性を論じるために、たっぷりとヌードを見せる演出もよかった。

戦争を全く語らない戦争映画だからこそ、その悲惨さがよく伝わる作品でした。ウクライナ戦争、広島のG7サミットの中でこの映画を観て、一層その感を深くしました。
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「最後まで行く」(2023)お笑い一杯の日本ノワール作品だった!

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ひとつの事故を発端に追い詰められていく刑事の姿を描いたクライムサスペンス。2014年の同名韓国映画のリメイク。中国やフランスなど各国でもリメイクされた作品とのこと。監督が藤井道人、岡田准一、綾野剛出演ということで、リメイクでも観ると初日初回に出かけました。小さな劇場でしたがほぼ満席でした。多くは「TOKYO MER」に流れていました。(笑)

監督:藤井道人、オリジナル脚本:キム・ソンフン、脚本:平田研也 藤井道人、撮影:今村圭佑、編集:古川達馬、音楽:大間々昂。

出演者:岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、杉本哲太、柄本明、他。

物語は、
ある年の瀬の夜、刑事の工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに向かうため雨の中で車を飛ばしていたが、妻・美佐子(広末涼子)からの着信で母の最期に間に合わなかったことを知る。そしてその時、車の前に現れたひとりの男をはねてしまう。工藤は男の遺体を車のトランクに入れ、その場を立ち去る。そして、男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みる。しかし、その時、スマホに「お前は人を殺した。知っているぞ」というメッセージが入る。送り主は県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)で、工藤は矢崎から追われる身になってしまう。(映画COMから)

「どこがどうリメイクされたか」、韓国版を観ていないで分からないですが、物語の背後に我が国の社会状況がしっかり組み込まれ、予想できる作りで、とてもうまい脚本、演出でした。

クライムサスペンスではあるが、人の繋がりも丁寧に描かれ、笑いが一杯。描き方はテンポが良くて、話の筋がよく繋がり、スリリングでちょっとホラーっぽく、格闘技にカーアクションありで説明より観て楽しむ作品となっている。これまでの藤井監督作品には見られないエンターテインメント作品となっています。


あらすじ&感想:(ねたばれあり:注意):
12月29日、大雨の夜。工藤は一杯飲んで、白い車で母親が危篤と病院に急いでいると、刑事課長の淡島から「お前、金取ったのか?週刊誌に載るぞ、なにやっている!」と電話は入る。「なんで俺が、(課のためだろうが)」と言い返していると妻から「お母さん亡くなった」と。その時、目の前に女が横切り、男とぶつかった。「俺は刑事だ!なんとかなる」という工藤の顔。 (笑)

下車して男を調べると即死!まわりをパトカーが走るがこちらに気付いてない。工藤はトランクに遺体を載せて急ぐ。ところが飲酒取り締まりの口煩い警官・梶(山中崇)の検問に引っかかり、飲酒と車の傷がバレ、トランクを調べられる。遺体からスマホの着信音にびくつく工藤。早く何とかしたい!(笑)
2雨の中、矢崎が現れた

「アウト!」と思っていたところに突然県警管理官の矢崎が現れ、工藤を引き取り、母親の遺体を見舞た後、警察署で会うことになった。

ここでの警察の内部事情がリアルで(笑)、岡田さんのちょとぶっ飛んだ刑事と綾野さんの冷たい、これ綾野さんという顔芸。これが結末でどんな表情になるか?(笑)

とりあえず工藤は病院に戻り、母の顔を見た。葬儀屋に母の遺体を預けるために同行。病院を出る際、妻から「あれ早く頂戴!」と言われ、「分かった」と返事し、葬儀屋に向かった。

交通課から「工藤のトランクに異物がある」と伝えられ、淡島課長が葬儀屋に飛んできて「仙葉からもらった金はどこだ?」とトランクを開けたが“空”!「遺体はどこに?」、ここを描かないという余白を持たせた編集が良い。(笑)淡島は「明日葬儀か」と確認して帰って行った。工藤はほっとした。

12月30日。工藤は署に急ぐ途中、車の傷修理のため、路肩で取締中のパトカーにブチ当て、警察のつけにして代車で署に戻った。(笑)そこに矢崎が待っていた。
矢崎は「仙葉組との金の繋がり、わかります。これも仕事のうち。困ったことがあったら連絡してくれ!」とは帰っていった。刑事課は1件落着と大喜び。

工藤は葬儀屋に引返し、「葬式までの遺体に付き添っていたい」と申し出て葬儀屋に喜ばれる。誰も居なくなった遺体安置室で天井を見て、男の遺体処分法が見つかった。天井裏を通風口を使って隠した男の遺体をここに運びも込み、母の遺体の下に入れた。警備員に見つからずこれを成し遂げた。(笑)ところがこの時、ふたりの男が遺体の冷却剤交換にやってきた。(笑)なんとかこれも無事に終えた。(笑)

仙葉組長(柄本明)餞別を持って弔いにやってきた。そして本作最大のポイント「砂漠のトカゲ!」の話をする。「足掻いても足掻いても砂漠から出られないトカゲになるな!協力しろ」というもの。「寺には大金が集まる。政治家はお布施と称してここで金を洗浄して儲けている。金庫番の尾田(磯村勇斗)をパクれ!あとは俺が金をパックって、後を継ぐ。お前、砂漠から抜けられる」と持ち掛けた。真実味のある話で、これが物語の壺だった。(笑)工藤は、男を引き殺しており、この話に乗った!

署に戻った工藤は尾田の逮捕状を要請、許可が出た。大喜びの淡島課長。工藤は尾田の履歴表を見て驚いた。自分が車で轢いた男が尾田だった。(笑)

刑事課のメンバーとして尾田の隠れ場・廃品処理場を囲んだ。そこに「俺は知っているぞ!お前が犯人だ!尾田を殺した」と怪電話が入った。さらに久我山刑事(駿河太郎)が電柱に取り付けられた防犯カメラを見つけ解析を始めた。白い車が写っている。「車番が読めるか」と騒ぎ出す。工藤はもうだめだと思った。「読めない!」を聞いて、工藤は「葬式だ!」とこの場を離れた。(笑)

葬儀屋に戻りと、そこに矢崎が待っていた。「遺体を持ってこい!」という。「そんなものない」というと、激しく蹴とばして「持ってこい!」と娘のミナを連れ去った!

ここから、矢崎が「持って来い!」という根拠に至る物語が描かれる。

12月28日、矢崎は明日親父となる県警本部長・植松から「尾田が保管している金庫の鍵を持って来い」と命じられ、尾田が管理する金庫のある墓地を訪れたが会えず、仙葉の力を借りることにした。

妻となる由紀子(山田真歩)の待つアパートに戻ってきた。由紀子の作った料理の量の多さ!(笑)矢崎の夢は何だったか。

12月29日の結婚式。派手な結婚式だったが矢崎の表情は冴えなかった。植松から「絶対に捕えろ!命令だ!」と言われる。そこに仙葉から「居場所が見つかった」と知らせてきた。

矢崎が尾田の隠れ場・廃品処理場に行くと尾田の彼女(清水くるみ)がいた。そこに「仙葉と会ったが話が違う」と尾田が帰ってきた。矢崎を見て、ふたりが逃げる。矢崎が追って尾田に発砲した。ふらつき道路に出た尾田が工藤の車に跳ねられた。矢崎は工藤の行動の一部始終を見ていた。

矢崎が本部長の父に「遺体を持っていかれた」と報告すると「バカ者!娘と年が明けたら別れろ!」とゴルフクラブで殴られた。遂に矢崎がキレた!父をぶん殴って踏みつけた。「警察に居場所はない」と矢崎が狂った!

話が葬儀場に戻る。葬儀が終って火葬場に遺体が移される。棺を担ぐ刑事課の面々、「何でこんなに重い!」と。(笑)

火葬場で遺体が窯に移された。工藤が職権発動して点火を止めた。そこに久我山刑事が「車番が読めた。お前の車だ、何があった」と聞く。ご都合主義な展開だが!(笑)工藤は実情を話して尾田の遺体を取り出し詳しく調べた。久我山が「弾痕があり工藤が轢く前に死んでいた」と言いう。工藤は遺体のスマホの指紋認証を解除し、通話履歴から彼女に電話すると、彼女が「元気!」と出た。

遺体を車に乗せて彼女のいる廃品処理場にきて金庫の鍵のありかを聞いた。「カードと指紋だ」と聞き、遺体からカードを抜き1本指を切り落とした。

久我山の車の中で工藤が「娘を取り戻す」と話すと「課長と話しをつけるから動くな!」という。そこに矢崎が現れ「車から離れろ!」と指示した。離れると同時にドガーンと大音響!クレーンで釣りあげていた鉄材が久我山の車に落ちて、久我山は即死。狂った矢崎の殺し方だった。面白い!!
3矢崎が「持って来い」と殴った

矢崎が父親を殴ったように工藤を虐め、「遺体を持って橋梁下に来い!」と去って行った。工藤はトカゲのように逃げ出し、遺体から金庫の鍵(カード)を取り出し指を切り落とし、仙葉から渡されていた爆薬を遺体に仕掛けて、矢崎の待つ橋梁下に出かけて、遺体と娘のミナの交換交渉に臨んだ。

交渉は上手く進んでミナを取り戻した。矢崎は「お前は俺に似ている俺を手伝え稼げるぞ」と車で去って行く。そのとき爆発!車ごと矢崎は河に落下した。

矢崎はミナを妻の元に返し、「俺はここに残る!」と寺の墓地にある金庫を鍵で開けてそこにある金を見た。山のようにあった。大晦日の夜、花火が上がり、寺は大勢の人でごった返していた!
4一万円札の山だった

しみったれた工藤が小さなバッグに札束を詰めていると、亡くなったはずの矢崎が現れた。ふたりは札束の中で戦った。舞い上がる一万円札。そして墓場に出て戦い、ふたりは死闘の末にぶっ倒れた。その時除夜の鐘が鳴り始めた。

新年へのカウントワウンが始まった。そこに仙葉が現れ、「県警に知らせたのは俺だ!お前のお陰でふたりは焼け死んだ。全部おれのものだ」と尾田の彼女を連れて去っていった(笑)

目覚めた工藤はこいつは死んだと矢崎を残してこの場を去った。車で海に浮かぶ橋を走りながら妻に「もう一度初めからやり直したい」と申し出て許可を取ったところに、矢崎の車が並列して走っていた。真っ赤な顔の矢崎が笑い、最後まで行くとついてくる!(笑)

まとめ:
物語は12月28日から4日間、除夜の鐘で新しい年を迎える中での物語。除夜の鐘に絡む大寺院の莫大なお布施が絡む犯罪事件話だからほっておけない。(笑)

お布施を巡る事件、何故警察官同志が戦わねばならない。絡むふたり刑事。工藤は母の介護にも金を欠くという貧乏刑事、も一方の矢崎は県警部長のバカ娘と結婚して出世をめざす。ところがいずれも警察内部の不正やヤクザ絡みの事件で窮地に立つ情けない警察官だった。これがリアルで、こんな面白い話は滅多に出てこない!

プロットは似ているが、日本のドラマになっていた。韓国作品を超えていると信じたい。(笑)

ラストシーン、ふたりは何が目的で戦っているのか?“最後まで行く”と車をぶっ飛ばす結末、もうこんな世界が嫌だと砂漠を飛び出すトカゲだった。 (笑)

このときのふたりの血だらけの微笑みのアップ顔は、岡田さんでも綾野さんでもない、お化け顔になっていました。ふたりでなければ醸し出せない「行けた!」という表情、すばらしい演技でした。

「この戦いを仕組んだのは俺だ」と女を連れて立ち去る仙葉。寺とヤクザに終わりはないという結末。柄本さんの長年鍛えた隠れたドスの利いた演技が見事で、全部持って行っちゃった。(笑)

笑って、笑って、笑いコケタ作品だった。
              ****

「戦場のピアニスト」(2002)原題:The Pianist

1ポスター


名作中の名作。ナチスドイツ侵攻下のポーランドで生きた実在のユダヤ人ピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマンの自伝の映画化、監督はポランスキーで彼もまたポーランド人の両親のもとに生まれ、収容所で母親を亡くし、各地を放浪して生き延びたという体験を持つという。2度目、DVD鑑賞です。

名作の感想を書くには力不足ですが、「感動の記憶をとどめたい」と駄文を残します。

原作:ウワディスワフ・シュピルマンの回想録、監督:ロマン・ポランスキー、脚本:ロナルド・ハーウッド ロマン・ポランスキー、撮影:パベウ・エデルマン、音楽:ボイチェフ・キラール。

出演者:エイドリアン・ブロディウワディ、トーマス・クレッチマン、フランク・フィンレイ、ミハウ・ジェブロフスキー、エド・ストッパード、モーリン・リップマン、他。

物語は、
1939年、ナチス・ドイツ軍がポーランドに侵攻。ワルシャワの放送局で演奏していたピアニストのシュピルマンは、ユダヤ人としてゲットーに移住させられる。やがて何十万ものユダヤ人が強制収容所送りとなる中、奇跡的に難を逃れたシュピルマンは、必死に身を隠して生き延びることだけを考えていた。しかしある夜、ついにひとりのドイツ人将校に見つかってしまう。(映画COMより)


あらすじ&感想:
1939年9月、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、シュピルマンはワルシャワ放送局のスタジオで、穏やかな気分で“ショパンの夜想曲”を収録しているとき、突然爆撃で窓ガラスの破片が飛び散る騒ぎで収録中止となった。ワルシャワへのドイツ軍の攻撃開始だった。混乱の中で退社時、友人ユーレク(ミハウ・ジェブロフスキー)の妹ドロタ(エミリア・フォックス)に出会った。
3ドロタ

連合国の攻撃に伴い厳しい食料統制がはじまり、ユダヤ人はダビデの星印が付いた腕章して行動することになり、道路や公園の使用制限などナチスの監視下で不自由な生活を強いられた。そんな中でドロタとのデートを楽しんでいた。ドロタがチェリスト志望で、これからの逢瀬を楽しみにしていた。

1940年、ユダヤ人はユダヤ人隔離居住区(ゲットー)に集められて生活することになった。所持金は2000マルクと決められ、大部の財産はナチに没収された。ゲットーへの移動はユダヤ人で溢れた。不安そうにドロタが路上で見送ってくれた。

ゲットーに住めるのは働けるものだけ。働けない者はナチス憲兵によって処分される。車椅子の老人を見つけビルから投げ捨てる。シュピルマンは非ユダヤ人向けレストランでピアノを弾いていた。弟ヘンリク(エド・ストッパード)は反政府活動で逮捕され、彼の救出にまた父の雇用証明書取得に奔走していた。

1942年8月16日、突然ゲットーが廃止になり、ゲットーの全員が働けるものと働けない者に区分され、働けるものは収容所に。働けないものは貨物列車で別の収容所(死所)に送られることになった。

シュピルマンは父母と妹と一緒に貨物列車を待つ集団に入っていた。絶望の臭いのする光景。泣く赤ちゃんを「ナチス憲兵隊に見つかる」と口を塞いで殺した母親の叫び声、飢餓で転がっている遺体、ナチス警備兵に撃たれた遺体、多くの物乞い、絶望の老人などでごった返していた。父が買った1コのキャラメルを6等分して家族で食べた。
4列車を待つ

シュピルマンは「死にたくない」と逃げ出し、ユダヤ警察官のヘラーに助けられ、労働者の群れを紛れ込んだ。父母と妹たちは列車で運ばれていった。この映像があまりのも残酷で観るに忍びない、よく撮れた映像だった
4逃げ出したシュピルマン

収容所のシュピルマン。朝の点検で働けない者は即銃殺される。恐ろしい死と隣り合わせの毎日だった。
6銃殺

シュピルマンは建築現場のレンガ運搬の仕事についていた。彼にはキツイ力仕事で、運んでいたレンガを落とし監視兵に追われた。

救ってくれたのは反ナチス地下活動組織の元軍人マヨレクだった。彼の紹介でユダヤ人労働者に食料を運ぶ仕事についた。食料の中に隠された武器を収容所内に運び込む。食料を受け取りに街に出た際、歌手のヤニアを見た!「生きたい」という衝動に駆られ、彼女をつけた。彼女の夫アンジイは反ナチス地下活動組織員で、誰もいない隠れ家(アパート)を準備してくれ、「万一の場合は」と避難場所を指示した。ヤニアが食料を運んでくれた。

1943年4月19日、反ナチス地下活動家が立てこもるビルを急襲するナチス・ドイツ軍。反ナチス地下活動組織の崩壊を目の当たりにして、シュピルマンは何をもなしえない自分を恥じた。ヤニアは「全滅でも希望がある、ドイツと戦う」という。ヤニアが亡くなり、アンジェイもゲシュタボに追われ、来れなくなった。隠れ家にナチス・ドイツ軍の臨検がはしまった。空腹に耐えられず食べ物を探していて隣室の婦人に発見された。

1943年12月、シュピルマンが避難場所を訪ねるとドロタがいた。彼女は結婚して妊娠していた。夫婦で暖かく迎えてくれた。夜、ドロタが胎教にと弾く「無伴奏チェロ組曲」を聞き、「ピアノを弾きたい」と思った。次の日、隠れ家へ案内された。

ドロタの夫ミルカに「ここの方が安心だ!と案内された隠れ家はナチス部隊が駐在する地域内だった。目の前に軍病院、手前のビルが都市防衛警察。部屋にはピアノがあった。「ピアニストとして生きる」と「華麗なる大ポロネーズ」曲をエアー演奏してみた。

食料運搬は放送局の技術師だったシャワスが担当してくれることになった。しかし、シャワスの食料運搬は遅れがちで、シュピルマンは遂に病気で倒れたが、ミルカ夫婦が医者を呼んでくれ助かった。シャワスはシュピルマンの名で募金集めをしていた。ドロタが「近いうちに反ナチス地下抵抗組織によるワルシャワ蜂起がある」と教えてくれた。

日々病院の出入りが増えドイツ軍の不利が伝わる状況だった。

1044年8月1日。反ナチス地下活動組織は、ワルシャワ蜂起を起こし都市防衛警察に攻撃を仕掛けた。それに対してナチス・ドイツ軍の大規模な掃討作戦が始まった。シュピルマンのいるビルも砲撃され、ナチス兵によるビル捜索が始まった。シュピルマンは部屋を逃げ出した。一夜を病院で過ごし、廃墟となったビルの天井部屋に逃げ込んだ。どこからかベートーヴェンの“月光“が聞こえた。誰かいるのか?(ホーゼンフェルト大尉が弾いていた)

食べる物がない!空腹の中で探し出したピクルスの缶詰。缶切りがなく、火箸で穴を開けっていたところ、音を聞きつけたドイツ将校ホーゼンフェルト大尉に見つかった。ホーゼントフェルト大尉が「何やっている」と聞き、名前と職業を聞いた。「ピアニストだ」と答えると、ピアノのある部屋に案内し「弾いてくれ!」という。
7将校にピアノ演奏

シュピルマンは汚れた指で何年も弾いてないが「聞いてくれ!俺のピアノを」とショパンの“バラード第1番”を弾いた。ホーゼントフェルト大尉は椅子に座りじっくりと聞き、心打たれ、「ユダヤか?」と聞き、そのまま部屋を出て行った。

ナチス・ドイツ軍は連合軍の進攻で末期的状況に追い込まれていた。ホーゼントフェルト大尉は指揮所をこのビルに移し、大尉が「ソ連軍が迫っている。あと数週間待つがよい」とジャム付パンと缶切りを運んでくれた。撤退の日、「戦が終ったらピアニストか、聞くよ」と食べ物と「寒いだろう」と軍用コートを置いて出て行った。

ドイツ軍に変わりポーランド軍がやってきた。シュピルマンはドイツ軍コートで助けを求め駆け出したが、ドイツ兵と間違えられ射撃を受けた。懸命の説得でポーランド人と分かってもらえた。

強制収容所から解放されたユダヤ人たちがドイツ兵捕虜を見て罵声を掛けていると「ピアニストのシュピルマンを助けた。助けてくれるよう伝えてくれ」とヴァイオリニストに声を掛けた。

シュピルマンはピアニストに戻り、ラジオのスタジオでショパンの“夜想曲”を収録していた。そこにヴァイオリニストが訪ねてきて「捕虜のドイツ将校が助けを求めていた」と伝えた。シュピルマンは彼とともにすでに廃墟となったドイツ捕虜抑留地を訪ねた。

ラストシーン、平和が戻った劇場
シュピルマンはオーケストラで“華麗なる大ポロネーズ ”を演奏していた。

まとめ:
ホロコーストを体験したピアニストの物語。ナチスのホロコーストを潜り抜け、反ナチス地下組織によって匿われ生きることに望みを託すが、ナチス・ドイツ軍の掃討作戦であわやという状況で、そこに現れたナチスドイツ軍将校にピアノ演奏を聞かせたことで救われる。ラストシーンで未来に希望を託したオーケストラのピアノ演奏で物語を閉じる

ナチスの犯した罪は許せない人類への大罪で、忘れることはできないが、これを許して前に進む。ピアノの世界ならこれを超えられる、“怒りと赦し”の壮大な世界感のある物語と感動しました。タイトルの「戦場のピアニスト」では物語の世界感が狭すぎる。原題のThe Pianistが合っていると思います。

原作者のウワディスワフ・シュピルマン、監督のロマン・ポランスキー、いずれもホロコースト経験者。経験した者でしか分からない情感のある小さなエピソードの積み上げ。大量のエキストラを使い、まるで当時を再現した映像。これらが相まって、観る人の感情を揺さぶり、ホロコーストの罪深さが伝わるすばらしい映像でした。

一度は消えたピアノの音が蘇り、強い生への欲望、その未来への希望へと繋がるピアノ曲で綴られる物語だった
               *****

「TAR ター」(2022)権力亡者が墜ちる生き様!ケイト・ブランシェットの快演でその悍ましさを見た!

1ポスター


ケイト・ブランシェット主演作、予告編の指揮者姿が恰好よかったので、何の前情報なしで鑑賞。 (笑)音楽無知にオーケストラの専門的な用語など知らず、難解でした。(笑)

第79回ベネチア国際映画祭、第80回ゴールデングローブ賞での主演女優賞作品。

監督・脚本:トッド・フィールド、撮影:フロリアン・ホーフマイスター、音楽:ヒドゥル・グドナドッティル。

出演者:ケイト・ブランシェット、ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス、ジュリアン・グローヴァ―、マーク・ストロング。

物語は
ドイツの有名オーケストラで、女性としてはじめて首席指揮者に任命されたリディア・ター(ケイト・ブランシェット)。天才的能力とたぐいまれなプロデュース力で、その地位を築いた彼女だったが、いまはマーラーの交響曲第5番の演奏と録音のプレッシャーと、新曲の創作に苦しんでいた。そんなある時、かつて彼女が指導した若手指揮者の訃報が入り、ある疑惑をかけられたターは追い詰められていく。


あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
リディア・ター(ケイト・ブランシェット)はペルー生まれのシピポ族。アメリカの5大オーケストラで指揮者を務めた後、ベルリン・フィルの首席指揮者に就任。作曲者としての才能も発揮し、著作もある。この世界のヒエラルギーTPOに立つ女性だが、必ずしも礼儀正しくないという女性オーケストラ指揮者。まだまだ女性はこの世界では少ない。ということでまるでターは権力の権現だ!

その生活ぶりが描かれる。

冒頭、楽団の副指揮者フランチェスカ(ノエミ・メルラン)とコンサートマスターでバイオリン奏者かつターの妻シャロン(ニーナ・ホス)が交わす会話から物語が始まる。「あの女に良心があるわけ、まだ愛しているの」。ターは男化してどうやら妻にも支配的らしい。
2レズ

ターとシャロンには養女で小学生のべトラがいる。ベトラが虐めに合っていることを知ったターが学校に乗り込み、相手の子を威嚇するという世間では一番自分が偉いと思っている。

ターはベルリン・フィルで唯一録音を果たせていない交響曲第5番をライブ録音し発売する宣伝の記者会見を行った。ここで「指揮とは何か」を問われ、よく分からなかったが(笑)、「時間を操ることだ」という。どうやらこれが彼女を権力者に押し上げた原因らしい。「涙を流したことがあるか?」に「ない」と言い、「指揮者になって殺人者にもなれることを知った」という。

楽団を支援する投資家兼代行指揮者のエリオット(マーク・ストロング)は指揮についてターに一目置いている。そんなエリオットに「副指揮者のセバスチャン(アラン・コーチュナー)を切れ!」と人事も自分の権限だと思っている。

ターはジュリアート音楽院を設立している。ここでの教育、バッハは男性優位主義だったから聞かないという男子学生に「指揮するためには偉大な音楽家がいかなる思いでこの曲を作ったのか向き合う義務がある。あんた消えるよ!」と一蹴する。自分以外の意見は聞かない!正解であってっも学生は許さない、大人バカだった。

そんなターに、シャロンが「首にしたクリスタ・テイラーからメールがあった」と報告すると、薬を飲み、著書「挑戦」からクリスタ記述の部分を破いて捨てる。ターはこの地位に登り着くまでに相当な悪行があったことを匂わせる。これが彼女の大きな心の傷になっている。

ターは作曲中でも突然のメトロノームの音に怯える!就寝中に突然起き出して部屋を見廻る!

これで精神的に追い込まれていく。怖いシーンになっていて、ターの精神状態を上手く表現している。これを克服するために河畔のランニングとボクシングのサウンドバッグ叩きを欠かさない。

オーケストラの指導。指揮台に挙がってタクトを振るブランシェットの姿は存在感・威圧があって圧巻です!ドイツ語で話すプランシェットが恰好いい。
3ターの指揮者

どこがどう悪いのかは分からないが、どんどん奏者に注文を出していく。奏者は全てを受け入れる。指揮者冥利に尽きるシーン。無駄な、権力の見せつけのようにも感じる。2階の録音室で収録音を確認する。この状況をフランチェスカがカメラに収めていた。自分が気にいらない奏者はすぐに外そうとする。これにセバスチャンが反対すると「私の権限!」と威圧を加える。これにはセバスチャンも引っ込まざるを得ない。

こういう管理者はけっこういますよね!

シャロンがクリスタからのメールをターに見せると、「忘れなさい!」と慰めるが、気が気でない。「情緒不安で推薦が取れない」という文を見て、涙ぐむ。

オーケストラの指導。「よくない!感情的によくない!」という。これを奏者はどう理解するのか!(笑)セバスチャンを呼んで嫌味たらたら!(笑)
4注文

ターは独断でチェロ奏者をオーディションで探すことにした。メンバーにとっては死活問題だ!オーディションもターの好みでオルガ(ソフィー・カイアー)に決まった。

ターはカフェでオルガに会った。ターはこの子に興味を持ったようだった!

オルガをアパートに呼んで指導する。このときから部屋に何かが居ついたように音がする。ターは深夜起き出して冷蔵庫を調べる!

オーケストラの指導。オルガを自分の前に席を設けて指揮。演奏が終わってメンバーから大拍手!あたりまえです!
ターはオルガのためソロ演奏をプログラムに加えることにした。さすがにこれにはメンバーから反対者が出た。

セバスチャンから「クリスタが自殺した。あなたは告訴された」と知らせが入った。ターは動揺した。セバスチャンがターを責めると「カラヤンでもやった!鞭で指揮していた、覚悟がいる」と言い返した。

オルガがアパートに訪ねてきた。ターは曲を作っていた。オルガがそれを見て「ここフラットがいい」と言った。ターは「まだ途中よ!」と返事したが、それでは収まらなかった。
6オリガ

ターがアパートを訪ねることでシャロンの精神がおかしくなり、ベトラが人形と遊ばなくなり様子もおかしくなっていった。

ターがオルガの古いアパートを訪ねたが見つからない。2階に登る途中で犬に追われ転倒して顔を負傷した。この顔でオーケストラの指導に出たが、メンバーが笑う。「つまらない男に殴られた」と話すが、信じる者はいない。フランチェスカが「チェロリストは?」と聞くが返事しなかった。

ターが曲を作りながらスマホを見るとセバスチャンから“ターのパワハラ映像”が送られてきた。

ターが楽団のプログラムメンバーに顔を出すと「性を強制されたと書かれ、ネットで拡散された」と言い、ターの出番はなかった。全員が敵に回っていた。スポンサー財団を訪ねたが、取り合ってもらえなかった。そしてクリスタの家族がアパートにやってきてアパート売却を妨害し始めた。
7エリオット

ターは楽団への復讐を誓った。指揮者エリオットが指揮台に立ったときにターが舞台に走り出してエリオットに殴りかかった。

その後、ターは故郷に帰り、自分が積み上げてきた努力を見直し、請われてタイに渡り、仏教で精神修養して「モンスター・ハンター」のゲーム音楽収録の指揮をとっていた。

まとめ:
トッド・フィールド監督は権力嫌いなんだ!これをケイト・ブランシェットに演じさせたところに意義がある!!(笑)

クラシック音楽界だけでなく色々な部門にあるヒエラルギーのトップに立ったものの権力と愚行、そのなれの果てがよく描かれていた。ラストで「モンスター・ハンター」の主題歌指揮者となったターをどう評価するか、「またモンスターになるぞ」と面白い結末でした。(笑)

SNS社会特有のキャンセルカルチャーで墜ちていく設定は面白い

ケイト・ブランシェットの演技が凄すぎました。指揮者のトップに立ち、自分の立場を見失い、社会のトップに立った気分で突っ走る傲慢な顔から、トップを追われる不安に怯える顔に、全てを失って発狂した顔。「ブルージャスミン」「キャロル」を上書きする演技、見事でした。彼女を除いてこの作品は存在しない!

オーケストラ指揮者の闇、ミステリアスでホラーっぽい作りがよくテーマに合っていて、最期まで楽しめました
そして何故、ターの演奏曲目がマーラーの交響曲5番なのか?これが分かる演奏・音響!ブランシェットの指揮が素晴らしかった!レコード化されると聞いて快挙だと思っています。

最後に、寝てる人、途中から抜ける人を見かけましたが、私自身も少しネタを仕入れておくべきだったと反省しています。(笑)
               ****

「オフィサー・アンド・スパイ」(2019)圧倒的な映像力で魅せる冤罪事件、そこに見え隠れする国家の闇!

1ポスター


19世紀フランスで実際に起きた冤罪事件“ドレフュス事件”を「戦場のピアニスト」(2002)のロマン・ポランスキー監督が映画化した歴史サスペンス。第76回ベネチア国際映画祭(2019)で銀獅子賞作品。WOWOWで鑑賞しました。

原作:作家ロバート・ハリスの同名小説、監督:ロマン・ポランスキー、脚本:ロバート・ハリス ロマン・ポランスキー、撮影:パベウ・エデルマン、美術:ジャン・ラバッセ、衣装:パスカリーヌ・シャバンヌ、編集:エルベ・ド・ルーズ、音楽:アレクサンドル・デスプラ。

出演者:ジャン・デュジャルダン 、ルイ・ガレル 、エマニュエル・セニエ 、グレゴリー・ガドゥボワ 、マチュー・アマルリック 、メルヴィル・プポー ジャン=バプティス、ヴィンセント・グラス、他。

物語は
1894年ユダヤ系のフランス陸軍大尉ドレフュス(ルイ・ガレル)が、ドイツに軍事機密を漏洩したスパイ容疑で終身刑を言い渡された。対敵情報活動を率いるピカール中佐(ジャン・デュジャルダン)はドレフュスの無実を示す証拠を発見し上官に対処を迫るが、隠蔽を図ろうとする上層部から左遷を命じられてしまう。ピカールは作家ゾラらに支援を求め、腐敗した権力や反ユダヤ勢力との過酷な闘いに身を投じていく。(映画COMより)


あらすじ&感想:
冒頭、1895年1月5日、第14砲兵連隊の営庭。着剣の連隊兵士が整列する中、国家反逆の罪(スパイ罪)で、衛兵によって連れ出されたドレフュス砲兵大尉が連隊長の号令で軍籍はく奪の儀が執り行われる。この席に罪を暴いた防諜部長サンディール歩兵大佐、これに協力したピカール砲兵少佐が倍列し見守っていた。サンディール大佐は梅毒で身体の震えが止まらない状態であった。
2儀式

ドレフェスは大声で「無罪だ!」と叫んだ。営庭の外に集まった多くの民衆から「恥知らずのユダヤ!」と野次が飛ぶ。当時のフランス人のユダヤ人差別感が分かるシーンだった。

絵画のように美しい重厚な儀式から物語が始まる。

ピカールは陸軍大学教官でドレフェスは教え子だった。ドレフェスから「教官だけの成績が悪い、ユダヤ人だからか」と抗議され「それはない!が、ユダヤ人は嫌いだ」と応えた記憶があった。スパイ罪の証拠となった文書の筆跡鑑定にあたって資料を提供し、軍法裁判で筆跡鑑定に疑義を挟まず、これでドレフェスのスパイ罪が判決された経緯があった。

ピカールは裁判協力の功績を認められ、情報局長コンズ将軍から呼び出しを受け、最年少の中佐に昇任しサンディール防諜部長の後任者となった。ピカールは情報畑でなく、後任は諜報部先任のアンリ少佐(グレゴリー・ガドゥボワ)が適任だと主張したがコンズは「彼は務まらない!」と一蹴し、決定された人事だった。それだけにふたりの関係はよくなかった。
3アンリ少佐

ピカールはドレフェス事件に関わることで、一度目は彼を牢獄に繋ぎ、2度目はここから解放することで大出世をした人物となります。

ピカールは着任早々、アンリによって部の各室、メンバーの紹介を受けるが、居眠りの守衛、トランプゲームの取調室、たったひとりでの情報処理室・資料室、私信を開封する調査室などに情報の偽造・漏洩可能な環境にあると認識した
アンリに業務改善を求めた。彼は不機嫌な敬礼を返して退室した。

ピカールの執務室にはドレフュスの有罪を決定づけた証拠の手紙(以下密書という)の写真が額に入れて飾られていた。

ピカールは療養中の前任者サンディールを訪ね事務引き継ぎを行った。機密費の45000フランと2500人のスパイ名簿、これは戦争時に処分することになっているという。そして、「任務を解かれてよかった」と漏らした。

諜報部の戻るとアンリは収集した情報を提出した。彼が教会に出向きドイツ大使館の清掃婦から受け取ったドイツ大使館付武官シュヴァルツコッペンが破棄した破片紙(文)だった。これを暗号解読将校のカール大尉が解読すると「120mm砲の水力駐退機と操作方法、野戦砲兵射撃教範素案」を求めたものだという。これを昨夜受け取り家に持ち帰り、今、報告することにアンリの勤務姿勢に疑念を持った。「以後自分がこの任に当たり、保管する」と言い渡した。

1896年3月2日。ピカールは教会を訪ね女性がやってくるのを確認して彼女がシートの下に置いた封筒を回収した。持ち帰り破片紙を繋ぎ、カール大尉に分析させた。宛名エステラジー少佐、文面「詳細な説明をお待ちします」だった。ピカールは陸軍将校名簿からエステラジー少佐はリーアン第74歩兵連隊所属であることを知った。アンリにエステラジーのことを聞くと「今はシュヴァルツコッペンも相手にしない雑魚だ!」という。

ピカールは部外の刑事デヴェルリーヌにエステラジーの調査を依頼した。ピカールと刑事は高級クラブで待ち合わせして、若い女性を伴ったエステラジーを観察した。彼はこちらに気づいたようで警戒し始めた。刑事は「女性は4本指に入る高級娼婦だ。モンマルトルに囲っている。彼はリーアンに駐在してない。砲術の講義を志望しているようだ」と調査結果を話した。このあとドイツ大使館を見張って、彼が出入りしている姿を捕まえ、写真を撮った。

ピカールは75mm火砲の展示射撃訓練を視察した。集まった講習者との歓談で、ベルリンに駐在のコーヒ少佐から「フランス陸軍のスパイがいる。50代の連隊長のようで特に砲兵の情報です」と耳打ちされた。

ピカールは「エステラジーは高級娼婦を囲うため金欲しさに情報をドイツに売った」と推論した
4コンズ将軍

ピカールはコンズ情報局長に会い、「エステラジーに見覚えがあるか」と聞くと「名を聞いたことがある」と言い副官し調べさせた。エステラジーがパリ転属を願い出た2通の手紙が残されていた。ピカールはこの手紙を借用した。

ピカールはこの手紙と彼の執務室に飾ってある密書の写真を筆跡鑑定人のベルティヨン(マチュー・アマルリック)に艦艇依頼した。彼はドレフェスを有罪に追い込んだ手紙の鑑定人だった。慎重に鑑定した結果、ドレフェスの証拠手紙は偽造であることが判明した。

ピカールは古文書担当のグラプリンにドレフェス事件の関連文書を見せるよう求めると、「部長の着任以前のものはアンリ少佐の指示で処分した」という。どこぞの国の官僚の話にそっくりです。(笑)

ピカールはボワデッフル参謀長に密書を再調査するよう具申した。参謀長は「破棄されている」という。ピカールは「文書存在の有無でなく筆跡が問題です」と調査を促すと、「コンズ将軍に話せ!」と指示された。

コンズ将軍に話すと、「エステラジーは該当しない。密書のことは忘れろ!」と命令された。

ピカールは諜報部に戻り、アンリを呼び「ドレフェス事件の密書は偽造だ」と責めると「そう言えというならそれに従います。殺せと言われれば殺すのが軍隊ですから」と言い、部屋を出て行った。

アンリがコンズ将軍に通報したのか、将軍が心配になったか、将軍が諜報部に乗り込んできて、ピカールが収集した資料を押収した。その後、密書の複製が「オーロール」紙に掲載された

コンズ将軍はピカールを招致し密書が流出したことを責め収監すると言い、再度事件から手を引くことを求めた。ピカールがこれを拒否すると「オーロール」紙掲載を見せ、秘密漏洩罪として拘置するが、これまでの勤務成績に鑑み情状酌量として東部出向を命じられた。

コンズ将軍はアンリを使って、ピカールが不在間に、彼のアパートを徹底的に捜索し、ピカールの愛人で外務大臣の妻・ポーリーヌ(エマニュエル・セニエ)と交わした手紙を押収した。

1897年6月、ピカールは各所を転々と移動しアフリカを最後に帰還した。常に監視され身に危険を感じ、ルボロフ弁護士に相談した。ルボロフは「事態は遅きに失している」とオーロール紙社主や上院議員、下院議員、作家エミール・ゾラらを含む協力チームを立ち上げた。

ピカールはセーヌ県軍司令官プリュー将軍の尋問を受けた。密書の写しが「オーロール」紙に渡した疑惑。愛人ポーリーヌに秘密を明かした疑惑だった。ピカールが「茶番だ!」と席を外した。

1898年1月13日の「オーロール」紙にエミール・ゾラのフォール大統領あての公開書簡で、ドレフェス事件に絡む将軍たちへの批判が掲載された。市民から「ゾラ死ね!」「ユダヤ人に死を!」という声が起こった。国はゾラを名誉棄損罪で訴えた。ピカールは秘密漏洩罪で逮捕され、護送される車の中でゾラの記事を読んだ。
5秘密漏洩裁判

1998年2月23日、ピカールの軍事裁判。アンリ少佐、コンズ将軍、ペリュー将軍、ボワデッフル参謀本部長の証言で、有罪「禁固刑1年、罰金3000フラン」で結審した。

ピカールはアンリとの決闘で判決を求め、これが認められた。

1898年3月5日、決闘はいずれかが傷を負い医者の判断で試合不能と判断された場合に勝者が決まるルール。ピカールがアンリの右腕を刺し格闘不能となりピカールが勝利し、アンリは国外の監獄へ送られた
6決闘

アンリは獄中で密書偽造を認めた。これにより、ドレフェス事件が再審されることになった。ドレフェスの弁護は敏腕弁護士ラボリ博士(メルビル・プポー)が担うことになった。

ドレフェス事件の再審開始
ピカールとラボリ弁護士が裁判所に出頭中、暴徒に襲われラボリ博士が亡くなった。獄中のアンリが自決した。

1899年9月、結審。反逆罪で有罪、しかし情状酌量の余地を認める。禁固刑10年に減刑する」というものだった。ピカールはドレフェスの兄に「受け入れるな!犯罪は消えない!」と示唆した。

1906年、破毀院が有罪判決を破棄し、ドレフェスは無罪となり軍籍に戻った。

ピカールは陸軍大臣を地位にあった。ドレフュスがピカールを訪問し無罪釈放に謝意を述べ、「大臣は私の事件で栄達した。無罪なら昇任があってしかるべき」と中佐昇任を求めたが、ピカールは「あのときは悪かった」と謝り、「法律がない!作るには今の情勢では不可能だ」と退けた。ふたりが二度とあいことはなかったという。世間にユダヤ人差別の風潮が戻った。

まとめ:
美しい映像で史上有名な冤罪事件が、余白のある語り口で、今この事件を映画にした意義を考えてくれと、滔々と綴られる。

誰がアンリ少佐にスパイ罪証拠密書の偽造を指示したか?これが描かれていない、ここがポイント。当時のユダヤ人を忌み嫌うフランス社会の中にあって、陸軍大学校生で自尊心の高いドレフェス大尉は将来の軍高官職に就くことが約束されている。彼にどう対応すべきか、ユダヤ人に対する国家、陸軍がもつ闇が見えてくる作品だった。

ピカール大佐の記憶からドレフェス事件を追うプロセスが描かれるが、その背後となる国家、陸軍の動きがぼやけている。ぼやけているところを補うことで今の社会に繋がってくる。冤罪事件がひっ繰り返ったのは、ピエール中佐の正義、これに触発されたエミール・ゾラら反体制派の批判で覚めた国民の自覚。現在社会へのメセージだった

19世紀末の冤罪事件が今の社会システムの中で生きているころがこの作品の見せどころだった。
7カンカン踊り

圧倒的な権力を具象化する建物、美術。特に荘厳な建築物と軍隊の制服の再現、社交界など当時の風俗がしっかり描かれることで、笑いやアクションのない小難しい物語を、集中力が切れることはなく観ることができました。(笑)。
               ****

「銀河鉄道の父」(2023)生き狂った賢治の生き様、これに関わる家族の愛!

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早逝した息子宮澤賢治の作品を世に送り出した父政次郎の息子への愛を描いた作品

誰でも知っている宮澤賢治と言われますが、名前は知っていますが、その作品を深く読んだことも、ましてその生き様など知らない。

監督が成島出さんで、描かれる骨太の親父像は好み。監督作では常連の役所広司さんが主役、これに若手ホープの菅田将暉さん、「ラストレター」の森七菜さん出演ということで、この作品を選びました。

原作:門井慶喜さんの直木賞受賞作「銀河鉄道の父」(2018)、監督:成島出、脚本:坂口理子、撮影:相馬大輔、編集:阿部瓦英、音楽:海田庄吾、主題歌:いきものがかり。

出演者:役所広司、菅田将暉、森七菜、豊田裕大、池谷のぶえ、水澤紳吾、益岡徹、坂井真紀、田中泯、他。

物語は、
岩手県で質屋を営む宮澤政次郎(役所広司)の長男・賢治(菅田将暉)は家業を継ぐ立場でありながら、適当な理由をつけてはそれを拒んでいた。学校卒業後は農業大学への進学や人工宝石の製造、宗教への傾倒と我が道を突き進む賢治に対し、政次郎は厳格な父親であろうと努めるもつい甘やかしてしまう。やがて、妹・トシの病気をきっかけに筆を執る賢治だったが……。(映画GOMより)

死と生を問い掛ける心理描写の多い原作の映画化。それだけに提示されるエピソードをどう読むか、観る人に任される余白のある演出。映画らしい作品になっています。想像もしなかった宮澤賢治像を見せてくれ、とにかく笑えて、泣けるエピソードが一杯。賢治の生き様にどう家族が関わったか、強い家族の絆に感動されられます。


あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)
物語は冒頭、1886年(明治29年)9月。商に出ていた政次郎は長男・賢治誕生の電報を受け取って家に急ぐ列車のシーンから始まり、ラストは銀河鉄道列車で旅に出た政次郎のシーンで終るという、作品そのものが“銀河鉄道の夜”物語になっています。

商いから急いで戻った政次郎は賢治を抱き上げて喜びますが、すでに名前は政次郎の父喜助(田中泯)により賢治と名付けられていた。(笑)

5歳の賢治が赤痢で隔離入院。「よせ!」という喜助の制止を振り切って看病に付き添うという、“父親すぎる”政次郎でした。(笑)

1914年(大正3年)、賢治16歳、中学を卒業。成績は88人中60番。政次郎は「家業につけ!」と言うと、「嫌だ!トルストイの小説を読んだ。お父さんやっていることは農民から金をとり苦しめることだ」と拒否した。農民に掛ける想いは賢治の精神的バックボーンになっていく。
2,嫌です

政次郎は「農民を助けるためにやっている」と賢治を番台に座らせた。鎌を質草にやってきた女に5円も貸すという桁外れた世間知らずの賢治に暇を与えた。(笑)

成すことなく土手に寝っ転がってるところに2歳違いの妹・トシ(森七菜)が通りがかり「何しているの、お兄ちゃんは日本のアンデルセンになりたいが目標だった。、文士になったら」と勧めた。賢治は「文士も商の才もない!」と投げやりに答えた。

賢治は政次郎に「進学したい」と申し出たが「長男のお前がバカ言うな!」と断わられた。これを聞いたトシが政次郎に「お父さんは時代を見る新しい父親、学問は宮崎家の将来のためになる」と賢治の進学を説得した。脇の甘い政次郎は“時代を見るあたらしい父親”に感動し賢治の進学を認めた。賢治は「農民を助けるために」と盛岡高等農学校進学を決めた。

1919年(大正8年)、学位を取得し研究生となった賢治が「人造宝石で家業を継ぎたい」と言い出した。唐突なこの言い出しに政次郎は翻弄される。

雪の日。老いた喜助が突然死の恐怖に駆られ暴れだした。東京の女子大から帰省していたトシが「死ね!」と頬を叩き「安心して!誰でも死ぬ!家族はみんなお爺ちゃんが好きだから心配ない」と抱いて喜助をなだめた。「わしの子供が出来た」と喜ぶ喜助を政次郎が抱いて泣いた。賢治は成すことなくこの情景を眺めていた。

喜助が亡くなった。白い喪服の会葬者の長い葬列が火葬場へと続く。このシーンを空撮で撮り、丁寧に描いています。生と死が繋がる儀式だった。

葬儀の後、賢治が仏壇で経をあげるようになり、ある夜、政次郎に「学校辞める。人のために何が出来るか己に問うてみた。俺は修羅になり人でなくなる。日蓮宗で生きる」と申し出た。ふたりが大喧嘩を始めた。祭りの日にも、賢治はその輪に加わることなく、人目を憚らず、日蓮の教を唱え太鼓を打っていた。賢治の姿に驚いた。

賢治は家を出て、東京の国柱会に入会し、ひとりでの下宿生活が始まった。どんと痩せ細っていく賢治。

1921年(大正10年)、そんな賢治に「トシビョウキ カエレ」と電報が届いた。賢治は原稿用紙を買い、物語を書いてトシが療養している別荘“桜の家”を訪ね、物語「風の又三郎」を面白く語った。これにトシは大いに喜んだ。
3,トシに「読み聞かせる

賢治はまた続きを書いた。この一部始終を政次郎が見ていた。トシの病は重くなり、トシを荷車に乗せ家族全員で実家に連れ戻し、その最後を看取った。トシは「今度生まれるときは強い身体で人を幸せにしたい」と政次郎に語って亡くなった。

1922年、トシの葬列も白い喪服に長い列だった。賢治はトシの荼毘を日蓮宗で弔った。
何度も何度も荼毘の火の回りを、日蓮の教を唱え太鼓を叩いて廻り倒れた。そんな賢治に政次郎は「お前の言葉で送ってやれ!」と声を掛けた。「もうトシはいない」という賢治に「俺が聞いてやる、書け!」と抱いた。
4日蓮宗

賢治は執筆活動に入り、自主出版の詩集「春と修羅」を書き上げて政次郎に渡した。政次郎は「評論家の評価がいい」ので、東京の書店を訪ね、売れ行きを聞いた。全く売れない!全て買い取ることにした。それでも政次郎は「書け!」と賢治を励ました。

賢治は「トシの療養地・桜の家で、ひとりで生活する」と家を出た。

1928年(昭和元年)、賢治は農民に科学肥料を使う新しい農業を教えるため「羅須地人教会」を立ち上げ、また音楽に親しみながら、執筆を続けた。

政次郎は家業を次男の清六(豊田裕大)に譲り、新しく金物屋「宮澤商会」として出発することになった。賢治を訪ね「お前の子供は書き物だ。書き物は俺の孫だ!だから大好きだ」と告げた。賢治は「お父さんのようになりたかった」と言い、聞いた政次郎は驚いた!(笑)

そんな中で、賢治の吐血を知った。賢治を医者に診せた。トシと同じ結核であることを知って動転した。

夜、ランプの灯りで賢治の書きものを読んだ!賢治が「アンゼルセンにはなれなかった」と悔やむと「トシの迎えになる。宮澤賢治の物語は本物だ!」と、政次郎は賢治を実家に連れ戻し自分が介護することにした。

政次郎は賢治の手帳に書かれた詩「雨にも風にも負けず・・」を読み、この身体でここまで書けるかと感動した。

1933年9月、賢治の症状は悪化し、臨終を迎えていた。それでも窮状を訴えにくる農夫に、「会いにくるのは大変なことだ」と会い、倒れた。最後まで農民に尽くす姿勢を崩さなかった・
5ラストシーン

最後の身体拭きを母のイチ(坂井真紀)が「母親の仕事です」と政次郎の手を借りずに行った。賢治は「小さな書店でもいいから、刊行を望む会社に任せてください。駄目な場合は燃やしてください」と遺言した。臨終のとき「自分が版行して見せる」と政次郎が「雨にも負けず、風にも負けず」の一節を諳んじると、賢治は「お父さんに褒められた」と呟き、微笑んで亡くなった。

1934年(昭和9年)、政次郎は出来上がった「宮澤賢治全集」を手にした。

まとめ:
政次郎は銀河鉄道の列車で旅を続ける中で賢治とトシに出会い、「ありがとがんした」と挨拶して終わるエンデイング。娘と息子を若くして失った政次郎が、何もなしえなかったふたりのために、「宮澤賢治全集」を世に送り出した。これが政次郎生涯の大仕事であり、成し得た満足感で自分が生かされたと感じる瞬間だった。とんでもない息子を持った政次郎ではあったが、爽やかな人生を終えたと思います。

大家生まれのおぼっちゃま育ちの賢治がこれほどの生き狂った男だったとは知らなかった。驚きました。祖父喜助の“死に狂い”を目の当たりにしこれを介護するトシの姿、愛して止まないトシの死。これで賢治は修羅に墜ちた。そこから引き戻したのが父政次郎の「書け!俺が読む!」だった。賢治に書かせたのは家族の絆、愛でした

日蓮宗に嵌って狂っていく賢治の姿は異常でした。菅田さんが痩せ細って、目を引きつらせ、見事に演じました。

賢治に引き回される政次郎。役所さんがあるときが厳格な父親で、またあるときがユーモアたっぷりのダメ親父を見事に演じ、「この時代にいた人だ」とつくづく思わせてくれる演技でした。

トシの森七菜さん。主役に次ぐ役で、難役でした!よく頑張っていました。今後の活躍を楽しみにしています。

映像も工夫がなされ美しい、よく出来ていました。「風の又三郎」で舞う原稿、なかでも美術がしっかりしていて当時の雰囲気のある映像でした。

遠くに離れている息子や娘に会いたくなり、宮澤作品を深く味わってみたい気分にしてくれました。
               ****

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー VOLUME 3」ユーモアというより感動 、泣ける結末だった!

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ジェームズ・ガン監督による「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズは、この「VOLUME 3」が完結編!現行キャストでの最後の作品でありジェームズ・ガン監督のMCU最後の作品。これを見ないわけにはいかないと駆けつけました。公開初日、満席でした。

監督・脚本:ジェームズ・ガン、撮影:ヘンリー・ブラハム、美術:ベス・マイクル、衣装:ジュディアナ・マコフスキー、編集:フレッド・ラスキン グレッグ・ダウリア、音楽:ジョン・マーフィ。

出演者:クリス・プラット、ゾーイ・サルダナ、デイブ・バウティスタ、カレン・ギラン、ポム・クレメンティエフ、ビン・ディーゼル(声)、ブラッドリー・クーパー(声)、ショーン・ガン、チュク・イウジ、ウィル・ポールター、マリア・バカローバ(声)、シルベスター・スタローン、他。

物語は:
アベンジャーズの一員としてサノスを倒し、世界を救ったものの、最愛の恋人ガモーラを失ったショックから立ち直れないスター・ロードことピーター・クイル(クリス・プラット)と、ガーディアンズの仲間たち。そんな彼らの前に、銀河を完璧な世界に作り変えようとする恐るべき敵が現れ、ロケット(ブラッドリー・クーパー声)が命を失う危機にさらされる。固い絆で結ばれた大切な仲間の命を救おうとするガーディアンズだったが、ロケットの命を救う鍵は、ロケット自身の知られざる過去にあった。仲間たちはいかにしてロケットの謎を明かして救うかという宇宙アドベンチャー・アクション作品です(映画COMより)


あらすじ&感想(ねたばれあり:注意):
冒頭、アライグマ時代のロケットが籠から引き出され、悲しげなロケットが涙を見せるシーンから物語が始まる。これがテーマです。

ガーディアンズがサノスとの宇宙戦争を終えて、破壊されたノーウェアの再建に取り組んでいた。ピーターは亡くしたガモーラの思い出を引きずって過ごす。ドラックス(デイブ・バウティスタ)とマンディス(ポム・クレメンティエフ)は甘い恋の夢の中。ピーターの育ての父に仕えていた居候のラクグリン(ショーン・ガン)はへたくそな弓矢の練習。そんな中でテキパキと働き、チームの面倒を見ているのはロケットとネピュア(カレン・ギラン)。ピーターが「アライグマ」と呼ぶと「俺はアライグマでない!」と言い返す。が、大きな秘密を持っていた。

ロケットが携帯プレーヤーで音楽を聴きながら歩いているところを、ギャラクシーズに恨みを持つソヴァリ人のアイーシャが生み出した、超人アダム・ウォーロック(ウィル・ポールター)に襲われた。すぐにギャラクシーズのメンバーが駆けつけ挑んだが、逃げられた。ところがロケットが苦しんでいる。ロケットを宇宙船ボウィ号の医務室に運び込んで、マンディスがメディカルバックで救急処置を施すが、反応がない。ネピュアが「制御プログラムが施されて治療ができない仕組み(キルスイッテ)だ」「ウォーロックを送り込んだのは開発した89P13だ」いう。ピーターにも記憶があった。

ピーターは遺伝子技術を誇るオルゴ・コープ社のある衛星オルゴスコープに行くことにした。
ネピュアは案内役を宇宙海賊のラベジャーズに依頼した。やってきたラベジャーズになんとガモーラ(ゾーイ・サルダナ)がいた。ピーターはびっくりした。ここにいるガモーラはピーターを知らない過去の世界からやってきたガモーラだった。(笑)
4ガモーラ

ガモーラの案内で、ギャラクシーズは軟体動物のような有機物質で出来た研究施設に潜り込んだ。しかし、発見されて研究所護衛兵と戦いながら、ガモーラの機転で89P13ファイルを盗み出すことに成功し、ボウィ号に戻った。

ボウィ号でロケットに治療を施すが肝心の制御プログラムを解除するコードが抜かれていた。ネピュアが「私にしたことより凄い!いろんな種を研究しているハイ・エボリーショナリー博士の仕業だ!」という。ピーターはエボリーショナリーのいるカウンター・アース衛星に行くことを決心した。

ギャラクシーズの行動と並行して、治療用ストレッチャーの上のロケットはエボリーショナリー博士の種の改良実験の記憶の中にいた。

ロケットは種の改良実験を施され半ば成功していた。同じように成功したカワウソやセイチュウ、ウサギらがいた。牢で、ロケットは彼らと仲良くなっていった。
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博士は亀を同じように実験したが、横暴な怪獣になり失敗した。落ち込んだ博士がロケットに「何故成功したと思うか?」と聞いた。ロケットが「プログラムだ」と答えると、「そのプログラムが欲しい」と再手術を行うことになった。ロケットは「殺される!」とここから逃げることにした。捕らえられている仲間と共に逃げ出したが、自分の他は博士に捕まり射殺された。ロケットは友のために泣いた!この辛い体験がロケットの人格を作り上げていた。

ギャラクシーズはボウィ号でカウンター・アース衛星に降り立った。この衛星は地球環境と同じだったが、住人は半獣人だった。ピーターは住民の女性にロケットの写真を見せて「この子がどこにいるか?」と問い、「ピラミッドにいる」と聞き出した。
5正門に

ギャラクシーズがピラミッドの門を叩き、巨大な半怪獣人の案内で広間に終結!ピーターとガモーラ、ネピュアがピラミッドの博士の研究室に侵入し、襲ってくる守備兵と戦いながらデーターを隠し持つ男を捕まえ、クルートと一緒に、ピラミッドから川にダイブして、男のデーターを奪った。巨大はクルートが多連装銃を持って、ピーターと背合わせで四周の敵と戦うシーンは圧巻だった。

奪ったデーターをボウィ号に持ち帰り、ピーターとガモーラがロケットの地様に当たった。ロケットの心臓が停止したが、懸命のピーターの救命処置で息を吹き返した。ピーターとクルートはロケットを抱いて泣いた。ガモーラはこの姿に感動していた。
目覚めたロケットは「ネピュアはどこ?」と聞いた。ピーターが運転席のネピュアに「ロケットが目覚めた」と伝えると、ネピュアが泣いた!

一方、ドラッグスとマンディスは外に出て、拘置されている沢山の子供たち、失敗作の怪獣たちを見た。ボウィ号は子供たちを収容した。
6決戦

エボリーショナリー博士の護衛隊とギャラクシーズの戦闘。ピーターはクラブリンを呼びよせた。クラブリンの矢の攻撃も見事だった!

ロケットは元いた研究所を訪れ、ここに捕獲されていた実験用のアライグマたちを解放した。

ロケットは「全てを完璧にしたかった」というレボリューション博士と対峙し「ありのままを許すことだ」と格闘、ネピュアが剣で博士を刺殺した。
6ロケットの決戦

ピーターは捕らえられていたものの収容を最後まで見届けていて逃げ遅れたがウォーロックの助けで、間一髪でボウィ号に飛び乗った。ウォーロックはこの功績でギャラクシーズに加えられることになった。

戦闘を終え、ピーターは地球に戻り父親を訪ねることにして、ギャラクシーズのチーフをロケットに譲ることにした。全員がこの申し出に賛同した。マンティスもチームを去ることに決めた。ガモーラはラベジャーズに戻ると決めた。

まとめ:
数々のヒーローを生み出してきたマーベル・スタジオのなかでも、ひときわヒーロー“らしくない”銀河一の落ちこぼれ&寄せ集めヒーローチーム。本作はその“落ちこぼれ”に焦点を合わせた物語、チーム一番の曲者ロケットの生い立ちに起因する闘いを通して、“ガーディアンズ”の愛すべきキャラクター達の絆、そしてそれぞれの“別れ”が描かれました。

このチームでの最後の作品となると、脱力感溢れ涙でした。完結編は前2作とは異なって、ユーモアより心に響く感動ものになっていました。

テーマは「完璧な種を生み出し世界を支配する」というハイ・エボリーショナリーとの闘い。バイオテクの急速な進歩の中で、将来の人類の闘いとして、これをテーマとしたのはよかった。これに「ありのままでいい」と戦うガーディアンズ。
それぞれの個性丸出しで、あるときは反目しながら、ロケットを助けるために自己犠牲と協力で戦うところは、平凡なようであって、宇宙戦争の中で描くと感動を呼びます。

今回は特にロケットの過去が、可愛い他の動物も絡んで、とてつもない人類の動物虐待を見せられるだけに、これを救うギャラクシーたちの正義に感動し、ラストでその別れを描かれると、これはもうとんでもない涙ものになります。

自然破壊、動物虐待が横行する現社会への警告でもあると思いました。

宇宙戦争。宇宙船を含む衛星でのアクション映像、いろいろな生き物に改造された多くの動物たち音楽と相まって、見たこともない世界に誘ってくれます。特にロケットの感情表情がすばらしかった!

キャラクターたちはどい生きて言うか。
ピーターとガモーラの恋、ピーターの「ありのままでよい」という結論。ネピュアの変貌、口の悪さは変わらないが、「ひとりでは何もできない」と姉や人を思う姿勢、びっくりしました。マンディスの「自分を見つめたい」という心境変化、ガモーラは「自分流に生きる」など語られなくなくても分かるという脚本がいい。ギャラクシーに新しく加わったコスモ、これは可愛い!これからのシリーズの楽しみになります。

ロケット、「俺はロケット・ラクーン」と宣言しました。これまでと違って、責任感を持ち、友への感謝で、チームのために貢献することになるでしょう!

ならずものの寄せ集め集団ではなくなってきましたね!(笑)ということで新たなギャラクシーチームが編成されました。

物語はテンポよく、説明より“観て理解しろ的”に進むので、1回ではストーリーを完全につかめないかもしれません。初心者の方はキャラクターを予習しておくとよいと思います。
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「マッドマックス 怒りのデス・ロード」(2015)マッドなデス・ロードで世紀末を語る!

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原爆で荒廃した世紀末、バイオレンスなカーアクションで描いたジョージ・ミラー監督の代表作。恥ずかしながら、まだ観ていなかった。(笑)
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第88回アカデミー賞(2016)で作品賞、監督賞ほか10部門でノミネートされ、編集、美術、衣装デザイン、音響編集、録音、メイクアップ&ヘアスタイリングの合計6部門を受賞。

監督:ジョージ・ミラー、脚本:ジョージ・ミラー 、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラザウリス。撮影:ジョン・シール、美術:コリン・ギブソン、衣装:ジェニー・ビーバン、編集:マーガレット・シクセル、音楽:ジャンキー・XL。

出演者:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン、ゾーイ・クラビッツ、ロージー・ハンティントン=ホワイトレイ、ライリー・キーオ、他。

物語は
資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した世界。愛する者を奪われ、荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)の軍団に捕らえられる。そこへジョー配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)らが現れ、マックスはジョーへの反乱を計画する彼らと力をあわせ、自由への逃走を開始する。


あらすじ&感想
世紀末。核戦争で地球は荒廃、身体は蝕まれ寿命は半分になり、人類は暴力に支配され、崩壊した世界。

警察官で使命感に燃えていたマックスは妻子を失い、インターセプターを駆って放浪の旅を続けていたが、デジタル砦の支配者・イモータン・ジョーの配下に捕まり、被爆兵士の輸血提供要員として拘置された。

ジョーは配下のウォー・ボーイ軍大隊長フェルオサにガスタウンに出向き石油の入手・運搬を命じた。フェルオサは8気筒2000馬力エンジンを持つ石油タンクトレーラー(ウォー・タンク)にミルク・タンクを牽引し、前後を武装車両、とバイクで警護させ砦を出発。
2フェルオサ

ジョーは出発にあたり砦から水を放出して飢える民を集め、「偉大な力を見せてやれ!」とフェルオサ出陣に檄を飛ばした。この映像は実に壮大!古代ローマ軍出陣の絵巻絵だ。

フェルオサはこの機会を利用してジョー専用の子産み女(性奴隷)5名を引き連れ、ジョーの女性圧政から逃れ生まれ故郷“緑の地”に亡命することにしていた。

荒廃した大平原を走るウォー・タンク。フェルオサは進路を“緑の地“方向に変更した。
この変更を砦でキャッチしたジョーはウォー・ボーイ隊を自ら率いて出陣。ジョーは肺を犯され人工呼吸器を背負いマウスで呼吸しながら、火傷の身体に鎧を着けての出陣。部隊はバイク、戦闘車、ショベルカー、棒吊りカー、楽団カー(火炎銃ギター、太鼓)など数十両で編成されている。いずれもユニークな車両だ。(笑)

先頭を走るのは死を名誉と心得るニュークス(ニコラス・ホルト)。彼は被爆者で輸血を必要とする。戦闘車の全面にマックスを鎖で繋いで立たせ、彼から受血しながら走った!
3血液袋に

右方向から数量のハリネズミ車が、ウォータンクに並進して、火炎銃と車輪に装着のナイフで襲い掛かる。フェルオサが巧みな運転でこれを跳ね飛ばしてばく進。転倒するバイク。
4ジョーの戦闘加入

そこにジョー軍が急迫してきた。ウォー・タンク車にショベル車が並進して襲いかかる。シャベルにウォーボーイズを載せ、ウォー・タンクに移り込んで子産み女の奪取にくる。これに護衛隊が火炎銃で対抗、敵の首が吹っ飛ぶ。フェルオサの巧みなドライビングで逃げ切り、天を覆うばかりの大砂塵に突入した。

大砂塵の中でジョー軍は車両がぶつかり合い大混乱!フェルオサは見事にジョー軍を振り切って大砂塵を抜けたが、ニュークス車がウォー・タンクの前面に出て横転!

フェルオサはウォー・タンクを止めて車両点検、女たちも下車して休憩中。横転したニュークスの車から、マックスが鎖で繋がれたニュークスを背負って現れ、鎖を切るよう求めた。鎖から解かれたマックスはウォー・タンクで逃げようとしたが、改造車で運転が出来なかった。マックスは女たちと一緒に、フェルオサの運転で、“緑の地”に向かうことにした。

フェルオサが何か引きずっているという。マックスが車体下を確認中にニュークスが運転席に顔を出す。フェルオサが突き落とした。

ジョーに協力する人食い男爵や武器将軍がバイク、火炎輔車、タンク車、棒跳び車などで追ってくる。
5男爵軍

渓谷隘路を前に、フェルオサはイワオニ族にガソリと隘路封鎖を取引しているという。ジョーは途中でニュークスを拾い、渓谷に迫ってきた。大部隊の接近に気付いたイワオニ族は渓谷入り口を爆破して消えた。ジョー連合軍は渓谷入口で立往生。

しかし、ジョーは改良バギー車で爆破された土砂を乗り越え、フェルオサを追ってくる。バイクでウォー・タンクを囲み、跳躍してタンクに挑みかかる。ウォー・タンクのフロントボディーで火災発生。ドーザーで土砂をかき上げながら走行して消火。
人食い男爵軍が追ってくる。兵士が釣り棒車でタンクに乗り移り攻撃してくる。女たちに銃を持たせて戦わせ、マックスがタンク上で戦い、フェルオの運転で彼らの追撃を振り切った。

ジョーが「スプレンディ!腹の子はおれのものだ!」とわめく。スプレンディ(ドロージー・ハンティントン=ホワイトレイ)が「砦に戻って楽に暮らしたい!」と言い出し、車から身体を乗りだす。前方に岩!ウォータンク・タンクが接触しスプレンディが落下!

ジョーがスプレンディを抱き上げて泣く。ジョー連合軍の攻撃が止った。

ウォー・タンクは休止。ケイパブル(ライリー・キーオ)が「磐に戻って暮らす!」と逃げ出すのをフェルオサが引き止めた。

夕陽の中、緑の地をめざして走り始めた。ウォー・タンクの車体にすがりついていたニュークスが「俺のミスでスプレンディを死なせた」と運転席に顔を出す。フェルオサは高い整備技術を持つ彼を運転室に招き入れた。負傷しているニュークスをケイパブルが手当してやり、このふたりは次第に好意を持つようになった。
6ニュークスの加入

ウォー・タンクはツンドラ平原に突入。追撃するジョー連合軍の車両がスリップで衝突・横転して大混乱。ウォー・タンクは湿地にハマり込んだがニュークスの知恵で脱出作業中、武器将軍が現れた。マックスがガソリンによる決死行動で止めた。

緑の地に辿り着いた。故郷で“緑の民”に会うが「放射能に汚染され緑の地はない」という。フェルオサは潮の海を渡り緑の地を捜すとバイクで走り出したが、マックスが「砦を乗っ取れ!」と薦めた。「ジョー軍を峡谷隘路に誘い込みタンクを外して道をふさぎ混乱させて潰す」と提言した。緑の民も同行した。

途中で人殺し男爵軍が襲い掛かる。1基のエンジン故障にニュークスが車体下に潜って対応。人殺し男爵の棒飛び車から兵士がタンクに飛び乗り女たちを狙う。マックスが応戦し、額に矢を受けた。2台のタンク車でウォー・タンク挟んで攻撃してくる。マックスは人食い男爵の戦闘車に飛び乗って格闘。フェルオサが男爵を射殺した。
7待ち構えるジュー

渓谷隘路の闘い。ニュークスがウォー・タンクを運転。緑の民がバイクで急襲!フェルオサはジョーの車に、マックスは楽団の車に乗り移り格闘。ニュークスは決死的な運転でタンク車を転倒させ敵車両を潰した。フェルオサがジョーを倒したが負傷したがマックスが自分の血を輸血し救命した。

ウォー・タンクはジョーの遺体を積んで砦に帰還。集まる民衆にジョーの遺体を披露。フェルオサは救世主と称えられ、砦の水門を開き、水を提供した。マックスは喜びの民衆の中に消えていった。

まとめ:
“ロードレース”が滅茶苦茶に面白い!格好良くて、真似したくなりますね!(笑)

マッドなカーチェイス、カーアクションの中、原爆で荒廃した世紀末を描く。結末が「英雄伝」、古史に求めたのが圧巻だった。モーゼの“出エジプト記”をひっくり返した人類の再生物語。人類の起源、女性社会に戻る、これがいい。

原爆で荒廃した世紀末様相。水源を確保して絶対的権力を振るう男性支配の社会制度。女性は子を産む機械。産まない女性は母乳生産機。植物は温室育成、石油エネルギーを母乳で取引、死を厭わない戦士の育成、古い車の改良・武器化。戦法は原始時代の狩りの戦法。

改造車の数々

これを絵で描く。ジョーによる砦の支配体制。改造された数々の兵器で荒廃した砂漠、大砂塵、ツンドラ、渓谷におけるダイナミックな戦闘アクション、カーバトル。圧倒的な映像だった!
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